最新メディカル英語用語集

連載第1回 吉田和彦

日進月歩の医学業界。新しいメディカル英語が次々に登場しているが、こうした用語の多くは語根や接頭辞などの語源を知ることで、より深い理解が得られる。最新の医学英語からさまざまな知識を吸収すれば、あなたもメディカル翻訳者に一歩近づけるはずだ。

 現在、膨大な数のメディカル英語用語が存在し、さらに急激な分子生物学の進歩や医学の発展に伴い、新造語も急速に増加しつつある。英語を母国語としている医療関係者であっても、これらのメディカル英語用語を修得することは困難なようである。多くのメディカル英語用語は語根 (rootword)、連結形 (combining form)、接頭辞 (prefixes)、接尾辞 (suffixes)などから成り立っている。

 これらの語の要素の意味と造語法 (word building) を学ぶことにより、難解なメディカル英語用語が覚えやすく、つづりやすく、また発音しやすくなる。さらに英語の論文を書く際にも、それらの語彙を正確につづり、適切な意味で用いることができる。このシリーズでは連結語をつくる際に用いるギリシア語 (ギ) とラテン語 (ラ) 由来の造語要素を中心に解説する。

連結語 (compound word)

 連結語とは、連結母音で結合された2個、またはそれ以上の語幹からつくられた語である。理想的につくられた連結語なら、その要素のすべてはギリシャ語もしくはラテン語のみ、すなわち単一の言語から由来すべきである。しかし例えば、hypertension (高血圧:ギ hyper- 過度に + ラ tensio 緊張) はギリシア語とラテン語の語源からなっており、語源的には supertension の方が好ましいと思われる。ギリシャ語のラテン語への同化、さらに古典ギリシャ語およびラテン語の英語への同化とともに、医学の語彙にはこのような雑種の混成語が多く見られるようになった。好ましくない“混血”が行われたからといっても、言語は生き物であり、混成語の価値が減ずる訳ではない。これらの混成語はそのまま残しておくべきものであり、それらはしばしば便利で、表現力に富んでいる。新造語をつくる際には“純血”を保つように努力すべきではあるが、すでに定着した造語はそのまま認めるべきであろう。fibroma (線維腫: ラ + ギ)、autoclave (オートクレーブ/加圧蒸気滅菌機: ギ + ラ)、jejunostomy (空腸瘻 = ラ + ギ) などは“混血”語を代表するものである。

 本来のラテン語の連結母音は、multiformis (ラテン語 multus + forma) のように、一般的には -i- が用いられていた。しかし、ギリシャ語の同化とともに、ギリシャ語では広く用いられていた -o- が、ラテン語の要素間でも、またギリシャ語とラテン語の要素間でも、連結母音として一般的に用いられるようになった。このような経緯から、dorsilateral の代わりに dorsolateral (側背の: ラテン語 dorsum + latus) が、また、hemodialysis (血液透析: ギリシャ語 haima + dialysis)、psychosexual (精神・性的の: ギリシャ語 psyche + ラテン語 sexus) などに代表されるような、-o- を連結母音として用いた連結語が一般的となっている。

 連結母音の存在により発音は容易となり、加えて次の語に先んじて母音で終わる連結形を認識することができる。

 では、以下の医学用語を造語要素で分解してみよう。

1. biosynthesis: ギ bios 生命 (英 life) + ギ syn 一緒 (英 together) + ギ thesis 手配する (英 an arranging) = 生合成
2. bronchitis: ギ bronchos 気管 (英 windpipe) + ギ -it is 炎症 (英 inflammation) = 気管支炎

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