日本語には英語に直訳できるものと、直訳できないものの二通りがあります。日英で発想の似た言い回しであれば、直訳ですむことが多く、訳すのは楽ですが、問題は、別の発想で言い表さなければならない場合です。発想を変えなければ自然な英訳がつけられない日本語の言い回しが、実はたくさん存在しているのです。
そういった、なかなか英語に訳しづらい日本語の表現は、書かれた言葉をそのまま訳すのではなく、内容をしっかり把握し、コンテクストで分析した上で、読み手のことを第一に考えた分かりやすい訳をつけなければなりません。
このコーナーでは、新聞やテレビで登場する政治経済用語や日常会話表現の中から、英語に訳しづらい日本語表現を抜粋し、それらを自然な英語に訳すテクニックを紹介していきます。まずは発想の転換法を学んでください。「日本語にまどわされないこと」 これが肝心です。
(今回の表現)
・外堀を埋める
・賛否両論真っ二つ
・保育所待機児童ゼロ作戦
・改革なくして成長なし
・一寸先は闇
・成功にあぐらをかく
意味は 「目的達成のために遠まわしな作戦をとる」 ことです。これを自然な英語で端的に言うとこうなります。
「抵抗勢力は外堀を埋め始めている」
The opposition force has started to maneuver.
「(意見が) ど真ん中で真っ二つに分かれている」 といったとらえ方をしてみましょう。これだけでは不十分に思われるかもしれませんが、この短い文で伝えたいことはすべて含まれています。文は短くシンプルに。これが大切です。
「専門家の間でも賛否両論真っ二つでした」
The experts are divided down the middle.
英語では名詞が長くなり過ぎるのは極力避けるべきです。最後に policy (政策)
を入れるなら、Zero-daycare-center-waiting-list policyといった具合に、前の語をすべてハイフンでつなぐ必要が出てきます。
文の中では、より説明的な英訳を心がけましょう。
「首相は保育所待機児童ゼロ作戦を支持している」
The prime minister supports the policy of a zero waiting list for daycare centers.
動詞がありませんが、センテンスとして十分通用します。短くシンプルな文ほど、伝わるものも多いのです。
There can be no growth without reform. としてもいいでしょう。
日本語の意味を考えてみましょう。「人生の前途は予測できない」 という意味ですね。「確かなものは何もない」 といったとらえ方をすれば、英語はとてもすっきりします。
「政界は、一寸先は闇と言われます」
In politics, nothing is certain.
「既に得た成功に甘んじて何もしない」 という意味ですから、この英語表現が最も適切だと思われます。小泉首相が年頭の記者会見で特殊法人改革について尋ねられ、「一段落したところではない。これから進んでいくのだ」 と語っています。この場合の 「一段落する」 も、英語にするなら rest on one's laurels が一番しっくりきます。
Now is not the time to rest on our laurels. We must move ahead.
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